[開催報告] シングルマザーの困りごと~学齢期の子を持つ家族に、地域は何ができるのか?(3/5)

貧困状態にある子どもが6人に1人いると言われている日本において、特にシングルマザー家庭の課題は深刻です(貧困率50%超!)。しかし、(当たり前のことですが)シングルマザーといっても十人十色、いろんな家庭がある一方で、その実態について私たちは知っているようで知らないのではないでしょうか。そこで、シングルマザーの当事者であり、当事者同士のつながりづくりを行っている「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西・神戸ウエスト」の安木麻貴さんにゲストにお越しいただき、どんなことに困ることが多いのか、お話を聞きました。

厚生労働省のホームページなどで公開されている統計資料を読み解きながら、よく寄せられる相談であったり困りごとについてコメントする進行となりました。

170305シングルマザーの困りごと資料 はダウンロード可能です(PDF。約1.3Mb)

1.ひとり親はどれくらいいるのか?(厚生労働省「H23全国母子世帯等調査」結果より)

  • 母子世帯は123.8万世帯、父子世帯は22.3万世帯。H5年は94.7万世帯だったのが、約20年で54.7%増。ピークがH14年なのは、団塊の世代が中心となった人口構造が理由。
  • 理由は、離別が約70~80%、死別が母子世帯は7.5%、父子世帯は16.8%
  • 離別シングルと死別シングルとではニーズが大きく異なる。離別は「覚悟・決断して別れている」ため、泣き言が言えない。
  • 同じシングルマザーでも、未婚の母には制度的に不利な部分が大きい。当事者の動きによって「みなし寡婦控除」制度の導入が進んでいる自治体もあるが(西宮など)三田ではまだ。動ける人がいない。
  • 世帯数では大阪・東京・北海道・神奈川・愛知…が多い。100世帯あたりシングル世帯の数でみると、東京は1.03世帯と最も少なく、沖縄が3.06世帯、宮崎2.35世帯、青森2.27世帯など、南北の都道府県で離婚世帯率が高い傾向がある(全国平均1.63世帯)。

2.住居の状況

  • 持ち家に住んでいる人は、母子世帯で29.8%、父子世帯で66.8%。とくに本人名義の持ち家率は母子世帯が圧倒的に低い(11.2% – 40.3%)。借りに行って良くない対応をされた、希望する市営住宅に入れない(不便な場所が割り当てられる)などの経験をしたことがある

3.親の就業状況

  • 就業率は母子世帯が80.6%、父子世帯が91.3%。
  • しかし、母子世帯で正社員就職できている人はそのうちの40%に満たず、平均年間就労収入は181万円。ここが日本の特徴で、世界の先進国では70.6%の就業率(日本の方が良い!)にもかかわらずシングルマザーの貧困率は圧倒的に低い。就職できれば貧困状態を脱出できる世界と、就職しても貧困状態から脱出できない日本。「働けど働けど我が暮らし」状態。
  • 子どもの年齢に応じた働き方として、キャリアダウンせざるを得ない? パートアルバイトを選択して18時までに帰らざるをえない

4.養育費

  • 協議-調停-裁判と進む。正しい知識があれば協議の時点で取り決めできるが、実際にはきちんと対応できていない。(協議離婚では、養育費を取り決めるのが30.1%、取り決めせずが67.5%。調停離婚になると、取り決め74.8%、取り決めせずが23.9%)。取り決めせずの理由は資料参照。
  • 養育費は家庭裁判所で基準があり、調停等で採用される。しかし、安定して支払われるとも限らず、常に「途切れたらどうしよう?」と不安になる。
  • 児童扶養手当の支給額算定根拠には養育費も「収入」とカウントされるため、児童扶養手当が低い額になりがち。また、子どもが18歳になると手当が切れる。母の収入はタイミングよくその分を補えるわけでもない。無年金者も多く先々のことを考える余裕があるだろうか?

5.公的制度の利用状況

  • ハローワークや市区町村福祉関係窓口の利用は多いが、他のひとり親家庭支援施策を利用している家庭は少ない。シングルマザーになったときはさまざまな課題に直面するためよく利用するが(一度は行く)、いったん距離や時間を置くと、次のステップに行くときに相談に行かない傾向がある。その理由は、いったん遠のくと再び行きにくい、ワンストップにならずたらい回しにされることがある、など。その結果、孤立しがち。
  • 地域の中で「相談先があることを知っている人」を増やす必要。自分だけの情報になりがち。
  • 母子家庭等医療費助成制度がある。神戸市は一時期母親の額を減らされたが、当事者の動きで復活した
  • 神戸市には「ひとり親サポートブック」という一覧がある。よくできているが、初回しか配布されないので、更新情報がひとり親家庭に届かない。
  • 明石市が先駆的な取り組みを行っている。

6.面会交流

  • 面会交流にせよ養育費にせよ、“受け入れる”までの「葛藤」に時間がかかる。どうしてもムキになってしまう。「受容=再生のきっかけ」であり、受容できれば継続につながる。
  • 感情のバランスを整えるのが非常に難しい。こういうときに家族(実家)はアテにならないものとすべし。

7.税金などお金のこと

  • みなし寡婦控除(市民税)・税法上の不利益をどうするか。所得税がどうしようにもならない。
  • マイナンバーとの関係。離別後、実際に子どもを引き取っているいないにかかわらず扶養しているものとして「扶養控除」を勝手に申請できる状態。相手が扶養控除を先に申請していた場合、マイナンバーの関係で実際に子どもを引き取っている側に扶養控除が認められない可能性がある。そうなると所得税の不利が発生する。
  • 生活保護世帯の子どもは「世帯分離」しないと進学ができない。子どものアルバイト代が世帯収入にカウントされて生活保護費減額となるため。
  • 児童扶養手当は4ヶ月に1回のまとめ支給。家計簿つけるのが難しい? 明石市は毎月支給になっている。
  • 児童扶養手当の2人目、3人目の加算額がH28.8より変更になった。2人目:5,000円→10,000円、3人目:3,000円→6,000円)

8.しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西・神戸ウエストの取り組み

  • 毎月第3金曜日晩に、高齢者支援施設「星ヶ丘ホームふれあいサロン」にて作り置き料理とおしゃべりの会を実施。持ち帰れるようにしている。1回あたり最大で5家族が参加。
  • おてらおやつクラブと連携し、寺から提供いただいた供え物をひとり親家庭におすそ分け。しんどいからこれない人に届ける取り組み。いただきものだからもらって!と言いやすい。なお、連携しているお寺は三田市酒井にある寺。

<困りごと>

  • 経済的プランニングを支援する相手・仲間をどうやって見つけるか
  • 子どもの学校の状況に応じて、キャリアダウンせざるを得ないこともある(正職員よりも、時間の融通のきくパートへ)。ちょうどよい仕事をどうやって見つけるか?
  • 孤立感、関係性が閉じることで親子関係が悪くなるおそれ
  • 親子断絶防止法案における面会交流の是非について、「子どもの権利」に即しているかどうかのチェックが必要
  • 定点で流れを見ている人がいない
  • 言い合えるコミュニティがあるか。コミュニティ=セーフティネットであり、支えることができる場。
  • 当事者はがんばりすぎる傾向がある。ゆるめるアドバイスもときに必要。
  • 当事者の集いは行政施策にないので、自主的に行わざるをえない。そこに出てこれる人は強い人。そうでない人にどうやって働きかけていくか

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実にいろんな実態が見えてきました。さて、私たちにどういうことができるでしょうか? まずは、関心を持つ人を増やしていきたいものです。

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